【前回の記事を読む】「医療事故」が適用される範囲は極端に狭い? 「医療に起因する死亡」と「予期しなかった死亡」の両方を満たしたものが…
第2章 医療事故調査制度の全体像を理解するために
(Ⅰ)医療事故調査制度でいう医療事故の定義とは
(4)「医療事故」と「医療過誤」
「医療過誤」は責任追及の用語であり、「医療の外」の用語である。責任追及で使われる用語に『予見』があり、『予見』とは因果経過も含めた具体的な予見であって、結果回避義務を伴うものをいう。
医療事故調査制度創設に当たって使用されることになったのは、緩い意味の言葉である「予期」である。「医療の内」の制度であり、専ら医療安全の制度である医療事故調査制度では、緩い概念の「予期」という用語とともに、「医療過誤」に対して「医療事故」との言葉が使われたのである。
言い換えれば、従来、いろんな人によりいろんな意味で使われてきた漠然たる「医療事故」という用語を医療法により法的に定義したのである。
医療事故調査制度創設に伴い、専ら医療安全の用語として「医療事故」が法的に定義されたのであり、今後、「医療事故」という用語は、「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、(かつ)当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったもの」という専ら医療安全の用語として用いるべきであろう。
「医療の内」と「医療の外」、「医療事故」と「医療過誤」の関係は表2‒1 のようになる。図2‒2枠外に「*過誤の有無は問わない」と記されているように、「医療過誤」かどうかと「医療事故」かどうかは、全く個々別々に決められることであり、「医療過誤」であっても「医療事故」ではない事案も存在し得るし、同様に「医療過誤」ではないが「医療事故」に該当するという事案も存在し得るのである。
