「予期しなかった」とは、「死因を予期しなかった」ではない。条文は「当該死亡又は死産を予期しなかったもの」と明記しており、条文のとおり「死亡を予期しなかったもの」である。

また、「予期」と「予見」を読み替えてはならない。「予見」は責任追及に直結する用語である。本質的に理解すれば、このような混乱は起こらないであろう。

(5)医療事故調査制度の名称変更は本末転倒

一般用語としての「医療事故」は多様な意味に使われてきた。一方、法令で定義されたものとしては、2000年に国立病院宛てに出されたリスクマネージメントマニュアル作成指針で示されたものがあるが、同通知はすでに失効している。

また、2004年に出された、大学病院・特定機能病院等を対象とした省令(医政発第0921001号)の定義がある。この医療事故情報収集等事業は現在医療機能評価機構に引き継がれており、この定義は大学病院・特定機能病院の研究事業上の定義として現存している。

その後、2014年に医療法上に「医療事故」が定義された。医療法は省令の上位法令であり、また医療事故調査制度は全ての病院・診療所・助産所が対象となっている。言い換えれば、全ての病院等で使用される「医療事故」という用語の意味が法的に定義されたということである。2014年以降は、「医療事故」という用語は、医療事故調査制度にいう「医療事故」の定義を用いるべきであろう。

日本医療安全調査機構は、報告件数が増加しない原因が「『医療事故調査制度』という名称が報告しづらくさせている」ことにあるとして、名称変更の意見を挙げている。この名称変更の意見は報告をさせるための手段を論じており、本末転倒であろう。

全国医学部長病院長会議患者安全推進委員会は、全国80大学病院のアンケートで「『医療事故』、『医療事故調査制度』という呼称が、患者家族等に誤解を生じさせている」として、対応のための現場の疲弊を理由に、国民に理解しやすい呼称を提案している。