【前回の記事を読む】「母は相当ひどい状態」と聞き、久しぶりに上京した母に「健康だよね?」と聞いた。すると、しばしの沈黙をはさみ…

サイコ3――奇跡の手

翌日、麻利衣は事務所のソファで足を組んでコーヒーを啜っていた賽子の前に右手の握り拳を固めていきなり立ちはだかった。

「何だ、そのしかめ面は。腹でも痛いのか」

麻利衣が拳を賽子に向けて突き出し、手首を回して掌を開くとそこには1個のサイコロが握られていた。

「やはり私はあなたの超能力なんか信じられません。もしあなたが本当に超能力者だと言うのなら、このサイコロが出す目を当ててみてください。それができなければやはりあなたは偽物です」

賽子はサイコロにちらりと目をやってから、ソーサーとカップをテーブルの上に置いた。

「私の超能力(フォルス)は見世物ではないと言っただろう」

「そんなこと言って逃げるんですか。やはりあなたはインチキ超能力者なんですね」

賽子の眼がギラリと光った。

「そこまで言うのなら特別に私の力を見せてやろう。その代わり、目を当てられたらその時は私の力を信じると誓え」

「分かりました」

「3だ」

麻利衣は賽子が何のためらいもなく断言したのにやや動揺したが気を取り直し、サイコロをテーブルの上に投げた。サイコロがテーブルの上を転がった後、3の目を上にして止まったので麻利衣は目を見張った。

「こ、こんなの偶然です。もう一度お願いします」

「次は6だ」

次の目も賽子が予言したとおり6だった。

「そんな……もう一回お願いします」

「何度やっても同じことだ」

その後、麻利衣は10回もサイコロを振り続けたが、賽子はその目を全て的中させてしまった。

「そんな……まさか……」

麻利衣は額に大量の汗を掻きながら、サイコロを食い入るように見つめたが、自分が買ってきたサイコロに細工がしてあるはずもなかった。

「これで分かっただろう。いい加減、私の能力を信じてもらおうか」

「ぐ……偶然です。こんなのただの偶然に決まっています」

「偶然? 確かにそうかもな。ただ、6046万6176分の1の偶然を引き寄せるのが私の力だとも言える」

平然とそう言い放つ賽子を前に、麻利衣は開いた口が塞がらなかったが、慌ててタロットカードを取り出して、その中から一枚を裏返しにして賽子の目の前に突き出した。

「それじゃ、このカードを当ててみてください」

「魔術師のカードだ」

賽子はカードを見もせずに再びテーブルの上のカップを取りながら言った。震える麻利衣の指からカードが零れ落ち、テーブルの上に落ちた。そこには紛れもなく魔術師の絵柄が描かれていた。