【前回の記事を読む】「電子レンジでチン」されたような最期…皮膚は白くふやけ、膨張した顔面。わずか5分の間に起った惨事だった。
サイコ3――奇跡の手
翌朝、麻利衣が事務所に出勤し、朝のコーヒーを飲んでいた賽子に挨拶すると、彼女は立ち上がって言った。
「お客さんか」
慌てて振り向くとそこには小百合が笑顔で立っていた。
「お母さん! 何してるの!」
「ほら、やっぱり娘がお世話になってるんだからご挨拶しておかなきゃと思ってね。
あの、娘がいつもお世話になっております。これ、美瑛のプリンとチーズケーキです。とてもおいしいんですよ」
小百合は土産を賽子に手渡した。その時ドクトルが近づいてきて、小百合の下腿に体を擦りつけた。彼女は黒猫を抱き上げて頬ずりした。
「あら、かわいい猫ちゃんね。クロスケそっくりね」
「もう、お母さん、恥ずかしいから帰って」
「えー、まだ来たばっかりじゃない。それにしても豪華なマンションね。こんな所が仕事場だなんて羨ましいわ。失礼ですが、あなたが社長さん? まあ、こんな美人さんが。調査会社って何を調査されるんですか?」
「私は超能力探偵だ」
「超能力?」
「お母さん、いいからもう帰って。ほら」
麻利衣は母の背中を押して無理矢理外に締め出した。ドクトルが小百合の腕から飛び降りた。
「ちょっとそんなに押さないでよ。お邪魔しました」
やっとのことで母を追い出すと、麻利衣はソファに座って溜め息をついた。
「ごめんなさい。昨日から北海道から母がうちに泊まりに来ていて、1週間程滞在する予定なんです」
「おまえの母親は相当ひどいな」
「すみません。昔からおせっかいが過ぎるんですよ」
「そうではない。病気のことだ」
「病気? 母は今まで病気なんか一つもしたことありません」
「離れているとはいえ、娘のくせにそんなことも気づかないとはな」
麻利衣は憮然とした。
「あなたに何が分かるんですか。勝手に他人の母親を病人にしないでください」
麻利衣は席を立ち、部屋の掃除を始めた。