【前回の記事を読む】カフェで突然胸を押さえ、意識を失った男性…同席していた男性が仕組んだ殺人だった。その手口は…

サイコ6――怪物の誕生

嫌がる麻利衣を無理矢理タクシーに乗せて目的地に着くと、二人は闇に包まれた龍魔神宮の鳥居をくぐった。神社を囲んでいる鬱蒼とした社叢から梟の鳴き声が不気味に響き渡った。月明かりの下、社務所の方へ向かっていると、周囲の物陰から白衣に松葉色の袴の装束を着た十数人の男たちが続々と姿を現し、二人を取り囲んだ。

「ちょっとやばいです。賽子さん、もう帰りましょう」

しかし麻利衣の泣き言にも耳を貸さず、賽子は泰然として男たちに向かって歩を進めた。彼らは一斉に賽子に向けて突進した。

「河原賽子が境内に侵入しました」

慌てた様子でやってきた装束姿の職員がひざまずいて鷹山と山口に報告した。

「ちっ、もう嗅ぎつけよったか。相変わらず鼻の利く奴だ。青竜が完成するまであともう少しだというのに」

鷹山がほぞを嚙んだ。そこへ安重糸がやってきた。

「総裁、とりあえず地下へ避難してください」

「分かった。山口、おまえは社務所を死守しろ」

「御意」

鷹山と安重は畳エレベーターに乗って地下に避難した。地下の研究室に着くと鷹山はすぐに研究員に指示した。

「電磁パルスの周波数を最大限にしろ」

「そんなことをしたら青竜は崩壊します」

「構わん。ここで役に立たないのなら、もう他で役立つ可能性はない」

やむを得ず、研究員が周波数を最大限にするとモニターに映っている青竜の体にテスラコイルのような激しい放電が生じた。

だが、しばらくすると爆発が起きてカメラが破壊され、モニターは真っ黒になった。研究室の全ての計器がショートして電源が落ち、薄暗い非常電源に切り替わった。

鷹山は何も映っていないモニターを見上げたままぽかんと口を開けて呆然と立ち尽くしていた。

「やっぱり負荷が強すぎたんだ。青竜は崩壊した……」

研究員は研究室の真ん中で項垂れて立ち尽くしていた。

と、その時、彼の足元の床が真っ赤に焼け爛れたかと思うと、床下から凄まじい火柱が噴き上がり、研究員の姿はあっという間に搔き消されてしまった。

火柱は天井にも大きな穴を開けて、火山口から噴き出すマグマのように研究室に耐えられない熱気を充満させ、触れただけで鉄をも溶かす灼熱の火の粉を撒き散らした。鷹山と安重は恐れをなして室のできるだけ隅っこに身を寄せた。

すると、その劫火の中からチェック柄のネイビーのスリーピーススーツに金色のネクタイを締めた少年が雨にでも降られたかのような落ち着いた様子で出てきた。灰色の皮膚を持ち、黄金色の両眼は爛々と輝いており、白髪は七三分けでしっかり整えられていた。

彼の体は炎に触れても一切損傷されることはなかった。少年は部屋の隅に追い詰められた鼠のように座り込んで震えている二人組を見つけると気後れすることもなく歩み寄った。

「お父さん、とお呼びすればいいでしょうか? 鷹山総裁」

少年が慇懃な態度で呼びかけ、笑みを浮かべたにもかかわらず、鷹山は顎をがくがくと震わせた。

「その通りだ、青竜。確かにおまえは私の息子。よくぞ目覚めてくれた」

すると少年は灰色の左手を差し出した。鷹山は驚いたようにその手を見つめていたが、ようやく手につかまると、青竜は彼の体を引き起こした。安重も慌てて立ち上がった。炎はいつの間にか消えていた。