ブラックジャックこと間黒男は幼い頃に宅地造成業者によるずさんな不発弾処理が原因で母親と共に爆発事故に遭った。名医による大手術ののち奇跡的に生還を果たしたが母親は還らぬ人となる。

また、全身に無数の手術痕が残り、顔面左部分には黒人混血児(ハーフチルドレン)の親友・タカシの皮膚を移植したため皮膚の色が異なっている。それがあの特徴的な外見の理由だ。

若菜は顔以外のほぼ全身に火傷の跡が残り、幼い頃には事故で親を失っている。確かに境遇としては似ていると言っても過言ではない。

「だからか、妙に親近感が湧いてしまったんです。その思いはいつしか『自分が医者になって私と同じ苦しみを抱える人を少しでも救いたい』という使命感のようなものに変わりました」

「ということは、若菜さんが目指すのは――」

「はい。どんなひどい火傷痕や皮膚炎をも完全に治癒させる形成外科医になることが私の夢であり、使命なんです。ちょうどいい被検体がここにありますしね」

そう言って若菜は自分の体を指し示した。少し自虐じみているが、裏を返せばそれだけタフだということの証明だ。この分なら名医と呼ばれる日だって遠くないのかもしれない。

「ちょうど元号が変わりましたし、私が令和のブラックジャック第一号になってみせますよ」

自信の裏に見え隠れする僅かな照れ隠し。若菜のフルネームは黒沼若菜。黒と若。読み方を変えればブラックとジャク。その意味を理解した途端、ただの偶然にしては出来過ぎな名前の由来に葵も思わず笑みがこぼれてしまった。

形成外科医・黒沼若菜の名前はのちに令和の名医百選としてメディアに取り上げられることとなるが、それはまた別の話だ。

次回更新は6月27日(土)、11時の予定です。

 

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