【前回記事を読む】「死神」について調べていたが、都市伝説でしょ?と同僚に笑われた…匿名掲示板を閉じようとしたその時、ある書き込みに目を奪われて……
Case:C 娘の選択
「あの、葵さん。会ったばかりで不躾なのですが、お願いがあります」
「お願い?」
「その死神さんに、亡くなった人を生き返らせることは可能なのか聞いてほしいんです」
葵は虚を突かれた思いがした。同時にそれは無理なのではと考えた。命を差し出す相手の前提条件は『死に瀕した者』だ。言い換えれば、まだ生きている者となる。難しい表情の葵を見て雛菊も色々と察したらしい。
「やっぱりムリ、ですよね……」
「えっと、ごめん。私にもそれは分からなくて……。期待させちゃったら悪いけど、ひょっとしたらできるかもしれない。だから何日か時間をくれる?」
「つまり、課長さんなら分かるということですか?」
「多分……」
ほんの僅かな、まばたきひとつで見逃してしまいそうなほど小さな変化だったが、雛菊は期待に満ちた眼差しを浮かべた。一方の葵はこれは滅多なことは言えないなと悩むこととなった。
会計を終えるとおもむろにマスターが口を開いた。
「そういえばお嬢様。先ほど鬼塚様からお電話がありましたよ。こちらに来ていないか、と」
「……鬼塚、なんて言ってた?」
「それが『学校へ迎えに行ったもののいつまで経っても出てこない。電話しても出ない。家にも帰ってない。心当たりがあるのはこの店だけだ』とおっしゃっていまして」
「それで正直に答えたの?」
マスターがためらうことなく頷くと雛菊はうんざりしたように端正な顔をゆがませた。
「雛菊ちゃん。鬼塚さんって?」
「私専属の運転手みたいな人です」
「う、運転手? すご……」
「やはりここでしたか、お嬢」