【前回記事を読む】怪しい男の車に乗せられて15分…到着したのは武家屋敷のような巨大な家。案内された部屋には“直径40cm”近い桶が置かれていて……

Case:C 娘の選択

「ちぃと沁みるけんね。我慢しんさいよ」

「はい……おぅっふ」

頰の傷口に消毒液を染み込ませた脱脂綿で触れられた鬼塚は痛みに耐えかねて素っ頓狂な悲鳴を上げた。

それを見た桜良はカラカラと笑いながら「どっから声出しよんなら」と言う。

口を開けると覗く八重歯がお転婆な少女のようでどこか愛らしい。

「や、沁みるモンは沁みるっすよ」

「強がらんでええとは言うたけど男なんじゃけぇ、ちぃとはこらえんさいや」

「んなムチャクチャな……」

「でもホンマ、なーんで男の子っちゅうんは毎日毎日生キズばかり作るんかねぇ」

「好きで作ってるわけじゃないんすけどね……」

「まぁ若いけぇ、一晩もあれば傷口なんかおおかた塞がるじゃろ。はい、オシマイ」

「ありがとうございます。凄く手際いいっすね」

キツ過ぎず、かといってちょっとやそっとのことでは緩まない巻き方の包帯や片手で簡単にテープを切る姿を見て鬼塚は感嘆のため息を漏らした。

絆創膏を貼るだけだったり、包帯を適当にグルグル巻きにする程度の鬼塚とはまさに月とすっぽんだ。

「ウチ、ここに来る前は看護師やったんよ」

「もしかして竹虎さんとの馴れ初めって……」

あえて先を言わなかったが桜良が、僅かに視線を落として頬を赤らめたところを見ると予想は遠からず当たっているといえるだろう。