【前回記事を読む】私には耐えられない。死んだほうが楽かもしれない…火事で家族を失い天涯孤独。そのうえ体の広範囲が焼けただれ、ケロイド状になった肌……
Case:B 元・医者の選択
「気にしないでください。初対面の方から可哀想だと思われるのはもう仕方のないことだと割り切っていますから。私だって昔は何度も泣き叫びましたしね」
「若菜さんでも?」
「えぇ。どうしてこんな目に遭わなければいけないのか。おじいちゃんもおばあちゃんも死んじゃったのにこの先どうやって生きていけばいいのか。こんな気持ちの悪い体を持った私を受け入れてくれる人なんているのか、と。
変なことをお聞きしますけど、葵さんが仮に男性だとしてほぼ全身に火傷の跡がある女性と性行為をしたいと思いますか? たとえどれだけ愛している人だとしても。綺麗な頃の体を知っていたとしても」
「それは……」
「でしょう? 正直に言うと私が男性でも躊躇すると思います。そう考えるのが自然じゃないですか」
「……」
「それでも、どれだけ望んだところで失った物は取り戻せない。無い物を嘆いたところで何も始まらない。だったら、残された僅かな手札で戦うしかない。極東の小さな島国・日本はいつだってそうして戦ってきた」
若菜は途中で誰かの物真似をしているように口調を変えた。
「軍人だった祖父がよく言っていたんです。当時は食べ物も鉄も油もみーんな困窮していましたから創意工夫や考え方でどうにかするしかなかった、と」
「おじいさんが……」