「それで一酸化炭素中毒に……」
「お恥ずかしいことに……。体調に違和感を覚えた時点で一酸化炭素中毒の疑いがあると気付くべきだったのですが……」
通常、石油ストーブを使用する場合は一〜二時間に一度、窓を開けて換気をする必要がある。だから就寝時は切るか窓を一部開けたままにするしかない。だが若菜は起きて待っているつもりだったからストーブも点けたままだった。おそらく、体を冷やして帰ってくる祖父を想っての行動だったのだろう。換気の不要なエアコンや電気ストーブがあればと思わずにはいられない。
「ですから私は祖母と同じようにあの火事で、厳密には一酸化炭素中毒で死ぬはずでした」
「良三さんが助けてくれなければ……」
「はい。現場に居合わせた近所の方の証言によると、祖父が散歩から帰った時には私たちの部屋の玄関から黒煙が漏れていて、割れたガラスの奥から火の手が見えていたそうです。出火元は私の部屋に置いてあった石油ストーブで、なんらかの事情でストーブが倒れたりしてカーテンか布団に燃え移ったか。あるいは私がうたた寝をしていることに気がついた祖母が毛布か布団を掛けて、それがずり落ちた拍子にストーブに触れてしまったか、というのが消防の見解です」
「おじいさんはそんな状態の現場に……」
「えぇ。火の手から一番離れた部屋のシャワー室を借りて全身ずぶ濡れになってから一目散に私たちの部屋に駆け込んで行ったそうです。消防が来たのはそれから十分ほど経ってからだったと聞きました」
「良三さんは怖くなかったんでしょうか。だって死地に飛び込むようなものじゃないですか」
「さぁ……それも本人に聞いてみないと。少なくとも私には無理だと思いますが」
次回更新は6月20日(土)、11時の予定です。
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