【前回記事を読む】2人きりになると「あなたを抱きしめてキスしたい」――職員としての私の覚悟と、一度きりの抱擁から始まった彼の変化

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クリスマス近くに娘から「プレゼント、Amazonで買えるからURL貼っておく」とLINEが届いたので、母は味気ないなあ、と石油ヒーターにあたりながら「非日常の大切さ」について思いをはせたのだ。

だがしかし、「反省」するんじゃなかったな、とすぐ思い返した。拓也さんが「そのクチ」だとは知らなかった。

「俺今月1月な、誕生日なんだよ」

食材の検品をしている私に拓也さんはそう言った。夫も同じ月に誕生日だったので、あ、同じ月ですね、何日?と尋ねた。

「15日だ」

嬉しそうに答えてくれた。

そうか、嬉しいんだな、誕生日。私は毎年1年づつ減っていったらいいのにな、年、と常に思っている。または、このままこの年齢で固定するという選択肢もあると良い。

まあ、どう強がっても女にとって「老いること」、そして「ババア」とカテゴライズされることは恐怖にほかならない。

拓也さんにとって誕生日が嬉しいのは、祝ってくれる人が沢山いるからだと私は知っていた。

しょっちゅうLINEしているから友達がいるんだろうし、妹さんが2人いるらしく、一緒に買い物をして「たっちゃん、それ一人で持てるの」「ちゃんと片付けられるの」(片付けられないんですよ、これが)と、「仲がいい」とはこういうことかと思わせるいい雰囲気でグループホームまで送られてくることがあった。

「あ、私はぼっちタイプだけど、拓也さんは娘が言うところの『陽キャ』ってタイプなんだ」と思っていた。いいね、それ、とも思った。

「そのクチ」とちょっと悪い表現になったけど、そうも言いたくなる。なぜなら、誕生日が近づいてくるにつれて拓也さんの気持ちが高まってきたからだ。