【前回記事を読む】色っぽい流し目で「ふふ、分かってるくせに」その意味に気づいた女性。他愛のない会話をぽつり…男女の交流的なものが続く

サッカー

「僕は絶対に一生君の味方をする」

そう言って今の夫は結婚を申し込み、もの凄い早業で私の家に挨拶に来た。

何度か家族と一緒にご飯を食べたり、向こうの家に招かれて容姿を「あらかわいい」、手土産を「おいしいわね、センスがいいわね」等々褒められたりして(よくよく考えれば息子が連れてきた彼女に初回からつけつけと「かわいくないわね」「なんて品のないお土産かしら、田舎者」などとは言わないだろう、と気づいたのは数年後だ)、なにか自分がとても素敵なものに思えた。

結婚式の準備、真っ白いドレス、赤い着物。「素敵ですね」「可愛いですね」と店員さんが鏡に映った私を褒めてくれる。「あらほんとうに綺麗じゃない」と試着室から出てきた私を見て母が涙ぐむ。

「うん、それが一番僕は似合うと思うな」、そう言って夫になる予定の彼が微笑む。

そして結婚式。ホテルのロビーの真ん中を歩くと「とても綺麗なお嫁さんね」と知らない人が呟いた。だいぶいい気になったが、通りすがった人は私でなくても呟くと思うと気づいたのも数年後だ。

娘よ、これが錯覚だと母は言いたいが、君はいつもヘッドフォンをつけて音楽を聞いているのでなかなか話す機会がない。20歳になるころまでには聞かせようと思うが、どうだろうか。

専業主婦というのは私に向いているらしかった。家のことをするのは好きだ。夫のために毎日献立を考える、ちまちまと部屋を整える。パリッとシャツにアイロンをかける。コーヒーを淹れて、早く帰ってきてね、と夫を送り出す。合間に女友達と会って食事をしたり、実家に帰って最近こんななんだよと話をしたり。いいわねえ、新婚。いいよ、新婚。

人間というのは次から次へと何かを求めるようにできているらしい。好きな男の奥さんになり、二人きりで過ごす週末。一緒に買い物をして、カフェでお茶を飲む。夜はゆったり話したり、抱き合ったり。そんな感じで日々は続いていくのかと思っていたら、次第次第に物足りなくなってゆく。2人では物足りないような気がする。夫もそう思ったようだ。