【前回の記事を読む】術式の説明を終えた医師は、患者の両親が退室した途端「旦那の方が説得しやすかった。理論でいけた。」…本当は医療ミスがあった。

第二章 未来

再手術を終えて二日目、透は予定通り六人部屋に移った。そこは大きい窓のある、明るく広い部屋であった。

まさ子はようやく、落ち着いて看病ができると胸を撫で下ろした。

(これが普通よ。あのリカバリー室が異常だった)

リカバリー室では、生死の境を彷徨っている人が多かったためか、そこに漂っていたのは、「命さえ助かれば」という最低限の希望が支配する絶望的な空気であり、その命を預けている病院には、何も文句が言えなかった。ドクターが処置するとき以外、個別カーテンは開け放し。

だから他の患者たちの様子が嫌でも目に入る。それも全員裸だ。ベッドとベッドの距離も近かった。全てが「医療者」目線であり、患者の「意思」や「心地よさ」は無視されていた。

この六人部屋では、患者側の都合でカーテンを引くことができる。患者の「意思」が尊重される。それがどれほどありがたいことか。個別のカーテンが、物理的にも心理的にもまさ子にプライベートな空間を与えてくれた。

無論、音は筒抜けだ。それでも八床と六床ではベッドとベッドの距離にも雲泥の差がある。特に透のベッドは部屋に入ってすぐ右の壁側であり、一方が壁であるため、隣り合う患者が一人だけというのがありがたかった。

窓際のベッドが享受できるような明るさはなかったが、まさ子はそれを不満に思うことはなかった。狭いとはいえ夜間横になる付き添い人用の簡易ベッドを置くだけのスペースもある。原則は「完全看護」の病棟であるが、意識が戻るまで、という条件で昼夜の付き添いが許可されたのだ。

(目が醒めるまで。目を醒ますその時まで、私はここを離れない!)

まさ子は透の手を握った。