彼のこれまでの生育の様子、現在の通園施設での療育内容を聞き取った後、個別指導ができる幼児学習教室からスタートということで療育を引き受けた。

曜日と時間を決めて療育を承諾したのに、お母さんは嬉しそうでなく、表情は来訪した時と同様暗かった。

お母さんは重い声で吐き出すように「娘も自閉症なんです。言葉もまだ出ていません」とぼそっと言った。私は飲み込んだ唾が喉に詰まり、しばらく声が出てこなかった。

いつもならお父さんにも協力してもらって、などと言うところだが、言葉が見つからなかった。両親の懊悩は向かい合えないほど深いのだろう。

父親は子どもが寝ている間に出勤して、子どもが寝てから帰ってくると話す、不満の響きさえ感じさせないお母さんの声が諦めと絶望の深さを表していた。

翌年小学校入学なので療育を申し込んだのと同じ頃、彼の就学相談も始まっていたはずだった、彼を入学させたい小学校を聞いた。

相談では支援学校の方が適しているというアドバイスをもらったが、お母さんは妹も重度の自閉症なので家から近い小学校の支援学級を希望した。そこは徒歩で通える距離だった。

就学相談担当の先生は家庭の状況を鑑みてくれたのか、スクールバスに乗って通学する遠方の支援学校よりも、両親の負担が少ないと思われる学区内の小学校の支援学級に入学を許可してくれていた。こうして長男の療育を開始した。

 

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「山道の外に飛び出したらまずい」…そう思った矢先に、妹は突然列を外れ、何かに引き寄せられるように野原の方へ入っていき……

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