【前回の記事を読む】デジタル化の波に押される老舗写真館……店の奥に保管された膨大な原板。もし廃業となれば、その“処分方法”が問題に
1、プロローグ
「ところで亮介君は結婚しないのかねぇ。お年頃だと思うのだが」
「亮介ちゃん、背が高くてハンサムだし、きっともてると思うんだけど」
「よその家の心配をする前に、我が家のことを心配してよね。うちにもお年頃がいるんですけど」
「おまえ、結婚する気はあるのか? 全然その気配がないが」
「良いご縁があればいつでもOKよ。そのうちゲットするから待っていてね」
静一と佳子は思わず顔を見合わせて笑った。
午後1時になり、亮介は昼の休憩を取ることにした。このあたりは食べるところが少なく、正午はどこも混み合っているので、少しピークを外して食事に出るようにしていた。一人暮らしの亮介はもっぱら外食だ。
店の鍵を閉め、外から見えるように「休憩中」の札を下げる。店内の明かりは点けたままだ。裏の出口からドブ板通りに出た。
近くの老舗のダイナーで昼食をさっと済ますつもりだったが、店の前には数人の若者が楽しそうに話をしながら並んで待っている。近くの専門学校の学生たちだろうか。
この店は10席ほどしかないので、番が回ってくるまでには30分くらいはかかりそうだ。仕方がないのでテイクアウトにした。
チーズバーガーとタコスを紙袋に入れてもらうと、そのまま国道を渡り三笠公園に向かった。途中の自動販売機でコーラを買う。
公園に向かう道は学生がちらほらと歩いているほかは特に人はいなかった。
観光客も来ていないようだ。もう少し暖かくなれば、このあたりは観光客で賑わうだろう。今はまだ風が吹くと上着なしで過ごすのは厳しかった。