1、プロローグ

通称ドブ板通りに隣接する間宮寫眞館は、戦前から続く古い写真館であった。戦後の混乱期に、質屋だった建物を先々代が譲り受け、今の場所に移り住んだ。

このあたりでは郷愁を感じさせる佇まいの建物である。

通りに面する古いショーウインドウには成人式の写真や家族写真などが展示してあり、歴史を感じさせるニス塗りの扉のガラスには、金文字で「間宮寫眞館」と書かれてある。

店内に入ると、正面にガラス張りのカウンターがあり、カウンター内を照らす蛍光灯が中に置いてあるオブジェのカメラや最近再び注目され始めたインスタントカメラ、フィルムなどの商品を青白く浮かび上がらせていた。

カウンターの背後には米軍払い下げの背の高い木製棚が据え付けられていて、中には先代のコレクションである古いカメラや、戦前に撮った街の風景写真などが展示してあった。

オイル引きの床が独特の香りを漂わせている。商談スペースにはビロード地の応接セットが置かれていた。ソファーの臙脂(えんじ)色が店内のアクセントになっている。

店主の間宮亮介は、5年前に急逝した父の後を継いだ3代目である。

父親が元気な頃は店を継ぐつもりはなく、市役所で働く傍らときどき店を手伝う程度だったが、父親の死後に残務を整理しているうちに、なんとなく後を継ぐことになった。