【前回の記事を読む】戦前から続く写真館を継いだ3代目…開店準備中、店のドアが開いた。最近この街で続いている“強盗殺人事件”のことを思い出し…
1、プロローグ
旭町小学校は間宮寫眞館にとっても大得意先だ。クラス写真や運動会などのイベントの記念撮影で大変お世話になっている。
「お互いさまだなあ。商店街全体の危機だもんな。栄屋デパートも結構厳しいらしいよ。デパートがもしなくなったら商店街も大打撃だよな」
「そうね。昔みたいに街を挙げてのボーナスセールもやらなくなったしね。つらいわ」
「ところでなんか用事があるの? 油を売りに来ただけ?」
「そうそう。うちの両親がさ、今晩一緒にお食事どうですかって。父親が知り合いから北海道のカニを貰ったのよ。カニ鍋にする予定なんだけど、たくさんあるから。どう、うちに来ない?」
「おう、そうなの。いいねえ。そんじゃ、お言葉に甘えて。ワインか何か持っていきますよ」
「OK。今夜7時くらいかな。じゃ、よろしくね」
静香はそう言うと、コーヒーカップを片付けて帰っていった。
亮介は父を亡くしてから一人で暮らしている。母は亮介がまだ小さい頃に病気で亡くなったと父に聞いていた。
一人で生活を始めてからは、隣の上村家がよく気にかけてくれた。静香とは兄妹のように育ったので、静香の両親は亮介にとっては親戚のおじさんおばさんの感覚だった。
亮介は休憩を切り上げ、自分のカップを片付けると店内の拭き掃除を始めた。