朝7時。亮介はいつものように開店の準備を始めた。

店の入り口に掛けられた黒い遮光カーテンを開けて表の通りに出る。空気はキンと張りつめていて吐く息が白かった。

コートを着込み、背を丸めながら駅に向かう人たちが店の前を足早に通り過ぎていく。ちょうど通勤通学の時間帯だ。

向こうから横断歩道を渡って黄色い帽子をかぶった小学校低学年の子供たちがやってきた。

「おはようございます」

子供たちは亮介のほうを向いてちょこんと頭を下げた。

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

子供たちと挨拶を交わすこの時間を亮介はとても気に入っていた。亮介は小学生たちに挨拶を返しながら店の前の掃き掃除を続けた。

商店街は以前に比べるときれいになり、道に捨てられた吸い殻なども減ったが、それでも一晩経つとそれなりに汚れている。

亮介は店の周りを丹念に掃き終えると店内に戻り、業務用のコーヒーメーカーをセットしてソファーに腰掛けた。ざっと朝刊に目を通す。

先週から世間を騒がせている一連の強盗事件が今日も紙面を賑わせていた。店舗を狙う犯罪は過激になり、とうとう殺人事件にまで発展している。

間宮寫眞館は大した売り上げではないが、狙われてはたまらないので何か対策を打つことを考えていた。

セキュリティ会社と契約をしてカウンターには非常ボタンを取り付けてあるが、警備員が駆け付けるまでに十数分は必要だろう。その間に襲われては元も子もない。

先日、振興組合で斡旋していた護身用の催涙スプレーでも用意しておこうかと亮介は考えていた。

店内がコーヒーの甘い香りで満たされてくると開店の準備が整う頃合いだ。時計を見ると8時を少し回ったところだ。

写真館としては比較的早い時間に店を開けるのには理由があった。