コール音が一回、二回、三回と鳴る。スマートフォンは、僕の願いなどお構いなしに、無機質な音を耳に運ぶ。プルルルルと音が鳴るたびに絶望し、音が途絶えた瞬間に希望を抱く。そんなことを数回繰り返し、もうダメかな、そう思ったとき、耳の奥にガチャッというこれまでと違う音が響いた。

「もしもし」

待っていた前園さんの声だ。普段よりも低く、くぐもった声だが、たしかに彼女の声だ。

「もしもし」僕も応えた。

「急にごめん。今、大丈夫?」

「うん、もうバイト終わるから」

「バイト中だったの? ごめん、切るよ」

「なにかあったの?」声から彼女の困惑がわかる。怪訝な表情をしているのだろう。僕から電話をかけたことなど、一度たりともないのに、よりによって喧嘩中にかかってきたのだ。

「話したいことがあって」

「……そっか。バイト先まで来てくれたら話せるよ」

「会ってもいいの?」

「うん」

前園さんからバイト先を聞き出し、そこに向かうことにする。そこは大学から電車で十分ほどの距離にあった。電車に揺られながら、前園さんから告げられた住所を検索すると、そこは古民家カフェのようだ。

都会の喧騒から逃れられるような静かなカフェ、前に彼女に連れて行ってもらった若者が多いカフェとは、ジャンルが異なるように感じる。ネット上でも「雰囲気がよかった」、「内装がおしゃれだった」などの高評価が多く見受けられた。

次回更新は5月5日(火)、11時の予定です。

 

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