【前回の記事を読む】彼と入った近くのファミレス、私しか知らない彼の“秘密”を聞かされて――私は俄然やる気が出た
第四章
友人との喧嘩は久々だ。遥香のことで頭がいっぱいで、前園さんのことまで考えられていなかった。適当に怒って帰ればいいものを、わざわざ僕の悪いところを指摘して怒ってくれた。そういう友達は、最近の僕にはいなかった。
昨日のことを思い返す。たしかに、遥香の母親に圧倒され、僕はなにもできなかった。手紙は入れたが、そんなものは読まれなければただの紙に過ぎない。あそこで彼女の言う通り、土下座でもなんでも行動を起こしていれば違ったかもしれない。
「自分が大切……か」
前園さんの言葉が蘇る。たしかにそうだ。思い返せば、これまでの僕はずっとそうだった。
遥香の妊娠が発覚したとき、僕は動けなかった。遥香の両親に、自分の両親に、周りの人に怒られたらどうしようと、そればかり考えていた。
遥香の両親に𠮟責されてもなお、僕は遥香を頼った。遥香に一緒に声を上げてほしいと。
本当に人任せな人間だ。自分一人ではなにもできない。
前園さんに言われるまで、気づくことのなかった自分を哀れに思う。
僕が遥香に会いたいのは、謝りたいからに他ならない。でも、なぜ謝りたいのかまで考えたことはなかった。罪悪感が芽生えたから―。
でも、なぜ今になってそう思った? 他にも罪悪感が芽生えた瞬間はあったはずだ。
なんならずっと持っていた。それなのに、なぜ今行動した?
これまで行動に移せなくて、今行動に移せたのは、いったいなぜか。自己分析だけが要因だろうか。僕は、遥香に会って謝って、なにを得たいのだろう? 遥香に謝るためなら、臆病を捨てられるだろうか。恐怖に挑めるだろうか。
自分では捌ききれないほどの疑問が浮かび上がってくる。
ここで、この疑問に見て見ぬふりをしたら、それこそ前園さんが言うただのプライドが高い臆病な男だ。それは嫌だ。克服しなければ、遥香に会わせる顔がない。
前園さんとも仲直りをしたい。溢れ出てくる疑問を、一つもこぼすことのないように、僕はノートに書き連ねていった。