僕は友達を簡単かつ自然にできる人だと思っていた。そうじゃない。友達は相手を労って、相手を想って、相手を認めて、そうやって初めて相手も返してくれる。そういう人を友達と呼ぶのだ。

大学に着くと、そこは大勢の人で溢れかえっていた。どこだろう。過ぎゆく人の顔を見ながら、必死に前園さんの影を探すが、彼女の姿は見つからない。広い大学には何千、何万もの人がいる。この中から目的の人物を探し出すのは、無謀に近い。

走ったせいで呼吸が乱れている。側にあったベンチに座り、切れた息を整える。冷静に考えると、前園さんに電話をかけるのが一番手っ取り早い。彼女が出るかは別として。

スマートフォンを取り出すと、情けないことに僕の手は震えている。前園さんに電話をかけることに、まだわずかな恐怖心を抱いているのだ。ここで動かなければ、結局また臆病なままだ。

前園さんはなぜ怒りながらも、自分にアドバイスをくれたのか。それは僕が自身の行動を振り返って、前に歩き出せるようにするためではないのか。これは前園さんがくれたチャンスではないのか。彼女の示した友情を、仲直りしたいと切に願う僕が無下にしてどうする。

冷たく震える手を抑えながら、僕はスマートフォンを取り出し、メッセージアプリを開く。前園さんから毎日のように来ていたメッセージは、あの日から止まっている。ずっと彼女の方から僕に歩み寄ってくれていたのに。今度は僕が彼女に返す番だ。電話をかけるための受話器の絵が浮かび上がる。これを押せば、彼女に電話がかかる。

ふう。一つ大きな深呼吸をして、僕はその絵を押した。プルルルルとコール音が鳴る。生きている人が当たり前に聞くであろうその音を、随分と久しぶりに聞いた気がする。