【前回の記事を読む】聞いていた話と全然違う。草食系男子じゃない。友達曰く「思い切りがすごくいい人」と聞いていたのに…
訳アリな私でも、愛してくれますか
礼は他社の見積もりも出していることから、かなり本気で外注先を変えたいと思っているのだろう。しかしなんの事前相談もなしに外部に見積もりを出させたことも、そしてずっと懇意にしてきた外注先に文句をつけられるのにも千春は耐えきれなかった。
「あのね……前にも言ったけど、仕事は人間関係っていうのも大事なの。フラットさんは私がこの会社に入ってきた頃から懇意だったし、色々融通を利かせてくれてる。修正も追加料金が出るようなものでもちょちょっとやってくれるし──」
「それは馴れ合いであって仕事ではないと思います。修正が必要であればきっちり伝えるべきだし、それが追加料金の発生するものだったら支払うべきですよね。だいたい、過去の依頼書を見ましたが、こちらからの指示が不十分なものが多いように思います。
明文化しないで担当者の口先であれこれ言うから戻しが多くなるんじゃないですか? 依頼書はもっと細かく作成して、できる限り戻しがないように作るのが俺は当然だと思いますけど」
頭ではわかっている。彼が正論を言っていることは。しかし、依頼書に時間をかけずともある程度電話で話せば伝わる外注先というのは、千春にとっては好都合だった。長い付き合いのおかげで相手の要望もある程度わかる。広告審査の基準も理解してくれているし、こちらから指示を出さずとも相手がフォローしてくれることも多い。
(吉川君が言ってることはわかるけど、それじゃ仕事にならない……)