【前回の記事を読む】「やめてください!」夜道で後ろをつけてきた男に向かって声を上げた。すると次の瞬間、耳を疑う言葉が……

訳アリな私でも、愛してくれますか

「昔から人になんて言われるかが怖くて、ずっと人の目を気にして生きてきた。アイドルが好きなことだってあんまり言えなくて、いつもSNSでつながった友達にしか話せなくて。でも、私アイドルが好きなのって結局可愛くなりたいんだって憧れてたんだよね。

でも、わきまえないブスだって思われるのが嫌で、もっというと努力しても可愛くなれなかったらどうしようって……ずっと怖くて、傷つくくらいならブスキャラで通そうって思ってた、それなら傷つかないって。でも、心は思ってた以上に麻痺してた……」

「俺、4月に新規事業開発部に入って、すぐあんたのこと気づいたんだよ。たまたま仕事で遅くなった日にあんたがまだ仕事してて。なんていうか、仕事に一切妥協せず先輩に食って掛かるところとかさ、遅くまで真剣に打ち込んでいる姿とか見てたら、いつのまにか目で追うようになってた」

「……え?」

予想していなかった言葉が秋斗の口から出てきて、理子は返す言葉がなくなる。

「別に、だからどうとか言いたいわけじゃないから。あんたが俺のこと眼中にないのは知ってるし」

「あの、私、ちょっと今脳みその容量がないっていうか……」

「気まずかったら、部屋に戻れば?」

「……戻ります。今日は色々ありがとう……」

おそらく赤くなっているだろう顔を見られたくなくて大げさに頭を下げ、そのまま部屋に戻った。玄関のドアを背に、さっきの秋斗の言葉が頭の中にリフレインする。

(私、なんかすごく変な態度をとったんじゃない……!? あんな事言われて、気まずいから部屋に帰るって……)

次第に理性が戻ってきて、秋斗に申し訳ない態度をとったことに罪悪感が募り始める。

(いや、もっとなんかあったよね。せめて何か違うことを言えばよかった……っていうか、そもそも目が離せなくなったって何? あれはどういう意味だったの!?)

ぐるぐるといろんな思いが頭を巡る。

(ダメだ、こんなの私1人で解決する問題じゃない。お風呂上がったら、くるみに電話してみよう)

お風呂の支度をしながら、理子はそんなことを考えていた。

そして風呂上がり、理子はくるみに電話でここまでの話をすべて打ち明けた。

「それは……まぁ確かに、相手にとっては酷だったかもね……」

「だよね。なんかもう、本当にパニックになっちゃって……」

秋斗の言葉の真意はなんだったのか、今でもわからない。

「目で追っちゃうって言われたんでしょ? それは、好きってことなんだと思うんだけどな……」

「けど、今まで全然そんな素振りも見せなかったし、なんなら他人に興味ないんだろうなーって思ってたから……」

「理子は、相手のことをどう思ってるの? 好意はある?」

「好意かぁ……。それもわかんないんだよね……でも、今日はこの人すごく優しいなって思ったし、正直ちょっときゅんとした。なんか、すごくじーんってしたんだよね。その優しさに」

「まぁ、優しいよね。理子のこと、本当に心配してくれてるんだろうなっていうのが、話を聞いてるだけでわかるもん」

「でも! その、今日はたまたまっていうか……そういうことをしてくれたから、かっこよく見えた、っていう可能性もあるわけで……。だから、わかんないの。今まで結構きついことも言われたし、いや、まぁそれも正論ではあるんだけどさぁ……なんか、向こうにそう言われて、私もそういえばオフィスで何度か豊橋の姿探したことあるなとか、思ったし……」