思っていることをつらつら口から垂れ流すと、電話口でくるみが笑顔に変わったのがわかる。

「何、くるみ。なんか笑ったでしょ?」

「ううん。でも、いいんじゃないかな? 何か自分から話しかけてみたら? 理子だって向こうのこと嫌いじゃないんだし、気まずいままでは嫌なんでしょ?」

「うん。それは嫌だ。部屋も隣だし、これからも会うと思うし……」

それ以上に、秋斗ともっと話したい、顔を見たい、会いたい、と思ってしまう。ただ部屋が隣で気まずいのが嫌だと言うよりも、もっと積極的な意味で気まずい状態は嫌だ。

(それって、好きだってことなの……? こんなこともわからないなんて……)

理子は29歳にもなって自分がこんなことすらわからないなんて、思ってもいなかった。

「……私、恋愛経験は小学生以下だからな……」

「私もだよ、恋愛経験なんて……ねぇ」

「あっ、そうだ。そういえばくるみ、今度の土曜日とか空いてない? もしよかったらなんだけど……一緒にライブとか行けないかなって……」

「あ、その日は実は……笹川さんと会う約束をしてて……」

「だよね……実は、コンサートの予定だったんだけど、ヲタ友に断られちゃって……推しのためにも席は埋めてあげたいんだけどさ」

「じゃあ、それに相手の子誘ってみたら?」

「いやいや、興味なさそうだよ本当に。もうね、そういうタイプと真逆」

「でも、断られるならいいんじゃない? それが話のネタになるだけで、気まずさはなくなるかも」

「確かに。それはあるね」

「じゃあライブに誘うっていう口実で話しかける」

「うん、それナイスアイデアかも!」

こちらから話しかけて、気まずさを払拭できれば話のネタは正直なんでもいい。じわじわとそのくるみのアイデアがいいもののように思えてくる。

「そうするわ、あとで聞いてみよう。っていうかさ、くるみの方はどうなの? 私ばっかり話しちゃったけど」

「それがね……実は、会社の取引先が前話した例の元カレだったんだ」

「えっ!? あのクズの!?」

「うん。それで、そこを笹川さんに見られちゃうっていう最悪の流れで……」

次回更新は4月2日(木)、11時の予定です。

 

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