【前回の記事を読む】「治ったの?それ」とアゴで私の胸を指した元カレ…私の胸について言ったひどい一言を、本人は覚えてもなかった。
訳アリな私でも、愛してくれますか
週末に予定されていたライブに一緒に行こうと言っていたオタク友達から、急遽行けなくなったと知らされた。SNSで知り合ったその友達は、家庭があるから仕方がない。今回も、夫の母親が入院したらしく様子を見に行くと言われ、さすがに理子も無理に一緒に行こうとは言えなかった。
(家庭があると色々予定合わせづらいよね……)
そんなことを考えていた時、ふと背後から革靴の足音が近づいてきているのに気づく。
(なんか、やけに音が近い気がするんだけど……)
恐怖に駆られ、理子は曲がり角の近くに設置されていたミラーで背後を確認する。するとさっき駅でやたらと理子の方を見てきていた男性がすぐ後ろにいた。
(やばい、これ……近すぎる。あのとき見られてると思ったのって、私の勘違いじゃなかったの……?)
ほとんど真後ろという距離、気づくと鼻息まで聞こえてきて、理子の心臓はばくばくと大きな音を立てて鳴り出した。相手はスーツ姿の男性で、年齢は30代後半から40代というくらいか。
こういう状況になることを想定したことはなく、理子はあまりの恐怖に手が震えるのがわかった。
(どうしよう、逃げたほうがいいの? それとも、気づかないふりする?)
何が最善なのかが全くわからない。しかしふと、秋斗の言葉がよぎった。
(ちゃんと、嫌なことは嫌、って言うんだ。こういうところから変えていかなきゃ。黙ってたら、相手に何も伝わらない……)
理子はそう思った瞬間、足をピタリと止めて振り向いた。
「やめてください!」
「は?」
背後にいた男性が、驚きの声を漏らす。
「さっきから、ずっと後ろをつけてきていますよね。そういうの、嫌なんです。やめてください」
「勘違いするなよブス」
男性は理子にその言葉だけを投げつけると、そのまま素知らぬ顔をして通り過ぎていってしまった。
(ウソ、私の勘違いだったの……?)