恥ずかしい気持ちと恐怖、そして悔しさがこみ上げてくる。しかしそれを感じた次の瞬間、急に聞き慣れた声がして顔を上げた。
「何してんだよ! 危ねーことすんなって……」
「豊橋……」
目の前には驚いた顔で駆け寄ってきた秋斗の姿があった。
「スマホ見ろよ、何度も電話したのに」
「なんで、ここにいるの……?」
「なんでっつーか……帰り道同じだろ。たまたま歩いてたらあんたがいて、その後ろを変なヤツがついてくから、スマホであんたに何度も連絡してたのに……あんたに声かけるべきだったわ」
「私の、勘違いじゃなかったの……?」
「勘違い? いや、アイツは確実にあんたのことつけてたと思う」
秋斗が見かけた時はまだある程度距離を取って理子をつけていたが、人がまばらになる住宅街に差し掛かったあたりから距離を縮め、近づいてきたらしい。そしていよいよ危ないと思って声をかけようとした瞬間、理子が急に振り返ってやめてほしいと言った……ということだった。
「もう、マジでびっくりした……はぁ」
理子の無事に安堵する秋斗を見て、理子の心が少し落ち着く。
「そんなに、心配してくれたの……?」
「当たり前だろ。本当、最悪なことにならなくてよかった……」
安堵する秋斗を見て、急に愛しさがこみ上げてくる。
(優しいところも、あるんだ。人に興味がないんだって、ずっと思ってた)
「とにかく帰るぞ。まだどこかから見られてるかも知れないし」
「うん」
秋斗が素早く周囲に視線を走らせながら、理子を促してくれる。2人は家まで残り少しの距離を足早に歩いた。