【前回の記事を読む】うまくいった商談の後すぐに届いた「受注キャンセル」メール…その理由は書かれてないが、完全に私のせいだった。

訳アリな私でも、愛してくれますか

歩きだしてからも、少し沈黙が続く。くるみから吐き出すのも妙だし、笹川もどこまで聞いていいのか困っているようだった。

「あの──」

「笹川さん──」

2人の声が重なる。お互いハッとして言葉を引っ込めた。

「あ、くるみさんからどうぞ」

「すみません、えっと……少しだけ、遠回りしてもいいですか」

「もちろんです」

いつもランチを一緒にとっていた公園を歩く。街灯の明かりが2人の歩く道をぽつりぽつりと照らしていた。

「今日は、情けないところをお見せしてすみませんでした」

「いえ。僕のほうこそ、出しゃばってしまったかと思って……」

「そんなことないです。でも、……こうやって謝るの、もう2回目ですよね」

「そうですね」

どちらともなく、近くにあったベンチに腰掛けた。

「……今日は、人生最悪の1日でした。さっき会ったのは、元カレです」

「元カレ……?」

「はい。私の左胸がないことを知って……私のことを訳あり商品だって言った人なんです」

「え……」

笹川は驚いた顔をした。そしてすぐに、その表情が怒りへと変わる。

「……こんなことを聞くつもりはなかったんですが、どういう経緯でそんなことに?」

くるみは大学時代のことを包み隠さず話した。そして、今日あったことも。

「それで、さっき彼から発注を取りやめるっていう連絡が来て、上司にものすごくたくさん怒られました。その大きなクライアントが同期の男の子に担当が変わらなければ、私は今月の目標も達成してたし、こんなことにならなかったのに……っ」

思い出してまた目頭が熱くなる。それでも泣いている姿を見せるのはためらわれて、くるみは上を向いた。

「元カレも言ったことは少しも覚えてないみたいだし、私だけが1人まだその思い出に囚われてるって感じでした。私も、忘れられたら良かったのになぁ……」

なんとか強がりで冗談めかしてみるけれど、涙が溢れてきて視界がぼやける。もう隠せない、と思ったその瞬間。