笹川がくるみを抱き寄せ、その頭を優しく撫でてくれた。

「そんな思いをしていたこと、気づけなくて本当にごめんなさい」

「笹川さんが謝ることじゃないです」

抱き寄せられた反動でこぼれた涙が、頬を伝う。それでも笹川の体温が、そして抱きしめる力が入るたびに、涙がぽろぽろとこぼれてきた。

「どんな理不尽からも、くるみさんを遠ざけたいです。本当は。あなたが悲しい顔をするのは見たくない」

「笹川さん……」

「いつも笑っていてほしいのに、そういうわけにはいかないのがもどかしくて……悔しいです。僕はくるみさんの、盾にもなれない」

「その気持ちだけで、うれしいです」

少し身体を離して互いに見つめ合う。

「泣き顔、また見られちゃいましたね」

「……」

笹川は何も言わずに、その涙を指で拭ってくれる。

「これは本当に思いつきなんですが」

「はい……」

「……くるみさん、僕のことを好いてくれていますか?」

「えっ……?」

予期していなかった言葉に、目を見開く。

「もしくるみさんがよければ、少し会社から距離を置くのはどうですか。まぁ、有り体に言うと辞めてしまうということなんですが」

「辞めてしまう……?」

笹川の言うことに、理解が追いつかない。戸惑っていると、笹川が言葉を重ねた。

「僕と一緒に暮らしてみませんか? 生活のことを心配せずに、会社から離れるならそれがいいと思うのです。くるみさんが自分の人生に向き合う間、僕が支えたいんです。もちろん常識的ではないことは理解しています。それでも……僕はくるみさんをもう泣かせたくないんです」

真剣な表情でそう伝えてくる笹川に、くるみはどう返事をしていいのか迷っていた。