【前回の記事を読む】「誰の部屋?私は一人っ子のはずなのに…」自宅の開かずの部屋に入ると、そこには男子用の家具が用意されていて…

壺を抱いたネコニャ

私は喫茶店でコーヒーを飲みながら、ネコニャのことをぼんやりと思い出していた。

カウンセラーに話したことは、もう秘密ではなくなっているから、現実の私もけっこうそこまでの事柄を、たいしたダメージもなく思い出すことができた。

家中を開放されたネコニャは、それでも野放図に動き回るわけではなかった。彼は一階の居間かピアノ室のソファーで、日中は過ごしていた。たまに外出したが、決まって図書館だった。

私たちはけっこううまくやっていた。プライベートの時間を尊重し、適当に家事を分担しながら、寝るとき以外はお互い上手に距離を取り、必要以上に鉢合わせしないように動き回っていた。

そういう意味では、ネコニャは猫のテリトリー意識を持っていたし、私もそれを感じ取っていたから、必要以上に彼を束縛しなかったのかも知れない。だから私たちは、冬中飼い主と猫の関係を保っていた。

その意識は私の方が、強く持っていただろう。昼間はネコニャを束縛しなかったが、夜は絶対に自分のベッドで眠らせた。建て前はソファーでは寝心地も悪く寒いだろうと思ったからだが、本音は電気敷毛布よりも彼の方がずっと心地よくて温かかったからだ。

こんなに便利なものを、そう簡単に手放すことはできなかった。だから私は、本物の猫のようにネコニャを可愛がっていた。

「ネコニャ。そろそろ布団を温めておいて」

私は本を読んでいる彼に声を掛けた。するとネコニャは、ピアノ室のソファーから立ちがり、私のベッドに潜り込んで本を読んでいるのだった。充分温まったところで、私はネコニャの身体に腕を回して、ぬくぬくを堪能しながら眠った。