長いことそれをやった。ネコニャが背後から抱きしめてくれる。その胸の硬さを私の背中は覚えた。顎のとんがり具合は、頭のてっぺんが覚えた。向かい合って抱き合っているときに、自分の右腕の持ち上がり具合で、ネコニャの腰の細さも覚えた。けっこうくびれている。
ついでに、骨盤の形も覚えた。鼓動の速さも覚えたし、足の長さも解る。私の足先は、彼の弁慶の泣きどころの辺りにある。張りのある細い髪の毛は、顔の半分を隠す。
それほど近くにいたのに、およそ半年間も、私たちはただ一緒に寝ていただけだった。どちらもけっしてそれ以上のことはしなかった。私はネコニャより八歳近く年上なので、十八歳の法律的に言うところの『青少年』に手を出して拒否されたら惨めだから、とても自分から手を出す勇気はなかった。
しかし、ネコニャがどうして私を抱かなかったのかは、その当時は、正直解らなかった。ネコニャは店で女性客にもてていたから、女に不自由していないのだろう。八歳近くも年上のおばさんなんか、抱く対象にもならないのだろう。おそらく私は好みじゃないのだろう。
などと、いろいろこじつけて、自分を納得させていた。だがその後のことを考えると、そんなわけではなかったようだ。私には理解できなかったが、とにかくネコニャは半年間据膳を食わなかった。
春になったある日、私が厚手の羽毛布団を片付け、薄い布団にカバーを掛けていると、ベッドに座ってそれを見ていたネコニャが、後ろから私の肩をつついた。
「ん?」
私は布団を広げながら振り向いて、彼を見上げた。
「もう、寒くないの?」
ネコニャはベッドに両手をついて、身体を支えていた。私は立ち上がり、布団の両端を持つとそれを軽く振ってカバーの中に納めてから、彼を見下ろした。