【前回の記事を読む】「実は、もう孫はおらん…息子夫婦とともに逝っちまいました」おじいさんに真実を言わせてしまった。噂は本当だったんだ。

ホームランとフォーマルハウト

「孫は、息子に似て引っ込み思案でして、身体も弱く、赤ん坊の頃からよく熱を出す子でした――」

わたしは困惑した。会って二回目の、それも縁の浅い相手に打ち明ける内容じゃない。だからと言って、今さら止めろとも言いにくいし、耳を塞ぐわけにもいかない。

「仲の良い子もおらず、ずいぶんと心配したものです。息子の転勤が決まって、あの子も父親を追って半年後には北海道へ行っちまいました。十になったばかりの頃でした。婆さんはとうに亡くなっていまして、ああこれが、灯が消えたってことなんだな、としみじみ思ったもんです」

やはり曖昧に頷くしかない。耳を傾けている内に、初対面の時の、水口さんの言葉が頭に浮かんできた。

「誰かと話したかった」

あの時確かに彼はそう言ったはずだ。当初は、寂しさのあまり話し相手が欲しかっただけ、という意味だったのだろう。話すうち、距離が縮まるうちに、〈誰かに話したかった〉に変化してもちっともおかしくはないと思う。

近所のおばさんでは井戸端の議題にされてしまうから、打ち明けるなら、できるだけ遠くの、袖をすりあうだけの、縁の薄い相手がいい、と考えたのかもしれない。であれば、野球のボールを打ちこんだ通りすがりの若い女はうってつけに違いない。あと腐れなくガス抜きをするのに、これ以上の適任者はいないだろう。

もうこうなったらとことん聞いてやろう、とわたしは腹を据えた。

水口さんの述懐は続く。一人っ子である息子さん夫婦に小さな命が宿ったこと、生まれた子の命名を託されて喜んだことや、初めて立った瞬間を目撃したのが自分だったことなどを、涙を浮かべながら誇らしげに語った。

話すほどに、顔から憂いが取れていくのがわかった。聞いているだけで役に立っていると思えるから、退屈であっても悪い気はしなかった。

ただここで問題が生じた。子供たちが退屈し始めたのだ。

「おじさん」

星の観察を途中で切り上げて濡れ縁に座り込んだ二人に、アツシくんが焦れたように声をかけた。母親の帰りが遅いとはいえ、いつまでもいるわけにはいかない。彼にすれば大人の昔話など、大型望遠鏡を覗くという稀有な体験に水を差す邪魔者でしかないのだろう。

「ん、どうした」

水口さんが穏やかな目を向ける。