【前回の記事を読む】孤独だった老人の庭を訪ねると、10人ほどの子どもが集まっていた。「もう新しい星を見つけたよ」彼が“新しい星”と呼んだのは……
ホームランとフォーマルハウト
四
「あの、工事始まっちゃいましたね」
水を差すつもりはないけれど、やはり触れないわけにはいかなかった。
「今年の秋には、もう――」
「構わんさ。ここから見えなくなるだけで、フォーマルハウトがなくなるわけじゃない。あれはいつだってそこにある」
星はいつもそこにある。言われてみると当たり前のことでも、夜空など見上げる習慣のない現代人には新鮮に聞こえる。
「言われてみればそうですね」
「夏に向かって夜空は賑やかになるぞ。一番星の多い季節だからな」
目を輝かせる水口さんを見て、こちらも嬉しくなってきた。
「仲間に入れてもらえますか」
「もちろんだ、あんたがいなくてどうするね」
快諾を得て安堵した。ユカちゃんがわたしのスーツの端をキュッと掴んだ。仲間入りの儀式のような気がして思わず笑みが漏れた。
「あんた、いや空木さんも今日はいい顔をしとる。なんぞいいことでもあったかね」
話すつもりはなかったけれど、前回訪問時に気分が落ち込んでいたわけを話した。思いがけず採用されて、今日が初出勤日だったことは、良い報告として打ち明けることができた。