【前回の記事を読む】若い部下を歓迎会に誘うと「俺今日予定あるんで。パスで」…いや、みんな予定空けてくれてるんだけど、と言うと…

訳アリな私でも、愛してくれますか

世代間ギャップをここまで感じることがなかったから、千春は途方に暮れる。それでも、まだ礼の配属は一時的なものである。ここをうまく乗り切れば、昇進と栄転があるのだ。そう思うと、少しは踏ん張れる気がした。

歓迎会の予定がなくなり、22時すぎまで仕事を片付けた。

(そろそろ帰ろうかな)

ぐっと背伸びをしたところで、岩下が水瀬さん、と声をかけてくる。

「すみません、そろそろ奥さんが帰ってきてくれというので帰ってもいいですか」

「全然いいよ、私のことは気にしないで。お疲れさま」

会釈をして岩下はオフィスドアに向かって歩く。

「……だったら早くそう言えよ」

(ん?)

さっきのが空耳でなければ、岩下は今そう漏らしてオフィスを出ていった気がする。

(それって、私が付き合い残業を強要してたって、彼は思ってるわけ?)

それを頭が認識した途端、どんよりと重い気持ちになる。

岩下は去年くらいに中途入社してきたが、それから毎日千春と同じくらい遅くまで残業をしていた気がする。勤務記録を見ても、だいたい千春と似たような打刻時間になっている。

(もしかして、私が帰らないから帰れなかった? 私、そんなプレッシャーかけてたつもりはないんだけど)

若い頃ほどこういう事態にも動揺しなくはなったが、さすがに気分は重い。

(私も帰ろう。京ちゃんのお店にでも行って、話を聞いてもらおうかな)