【前回の記事を読む】「レジでぼんやり、アイドルの写真集とか買う人いるんだなって思ってみてたら、アンタだった」隣人の同期にそう言われ思わず……

訳アリな私でも、愛してくれますか

「まぁそれもあるけど……私達が見てるステージの笑顔の裏には、彼女たちの努力があるわけで……。たくさん練習もするだろうし、傷つくことも、辛いこともたくさんあると思う。

でも、その努力がステージの上で結実してる!っていう瞬間を見られるのが好きなんだよね。その姿に勇気をもらえるっていうか……私も頑張ろうって思える」

「意外としっかりした理由だな」

「そうかな? まぁでも、アイドル推し人生長いしね。色々考えるでしょ」

「もしかして、それでうちの会社入ったとか?」

「えっ、よくわかったね!? そうだよ、私はアイドルに人生助けられて生きてきたから……彼女たちが今、あんまり地上波でテレビに出られないのが辛いんだ。そりゃ昔に比べたら知名度は落ちるかも知れないけど、ものすごく彼女たちは頑張ってパフォーマンスのレベルを上げてるから……もっと露出を増やしてあげたいの。

動画メディアとかで、ゆくゆくは彼女たちを出してあげたいの。だから私がまずは、偉い立場の人にならなきゃって。そして彼女たちをキャスティングしたい。もう一度、多くの人に愛される国民的アイドルになってほしいなぁって思うんだ。まぁ、少しは一緒に仕事したいっていう下心もあるかも知れないけどね」

「ふーん。そういう夢あるのいいな」

(笑った……!)

秋斗がふんわりとした優しい笑顔を見せた。自分に向けられた笑顔を見るのは初めてのような気がする。

「何?」

「いや、なんでもない」

驚いた理子の様子を見て、何か感じ取ったのかすぐに笑顔が消えた。2人でマンションのエントランスに入る。

「ところで、最近は仕事忙しい?」

「うーん、まぁまぁかな。もう少ししたら、ちょっと忙しくなるかも。そっちは?」

「うちもまだ今はそんなに遅くなることはないな。でも、新規事業の立ち上げがもうすぐだから、そこからは忙しいと思う」

「そっか」

 そういう話をしているうちに部屋の前に到着し、それぞれ鍵をあける。

「あ、そういやあんたも今度の同期飲み行くだろ?」

「ああ、そういえばまた飲み会あるんだってね。行くつもりだけど、そっちは?」

「俺も今のところは行く予定」

「そっか」

「じゃ、おやすみ」

「おやすみ」

挨拶をして部屋に入る。