やがて二〇〇一年になり、部下が増えたP氏は嬉(うれ)しそうな顔をするときもあったが、根本的な問題は何一つ解決されていなかった。

そして五月に入ったある日、数ヶ月前から姿を現すようになっていたO部長という五十代後半の人物が私たちを会議に招集し、自分が新たにリーダーを務めることを同席するP氏に配慮しながら発表した。

O氏は親会社の意を受けてX社に来た人であるらしく、三十人ほど社員がいる企業で主人公として振る舞っていたP氏はあっけなく感じるほどの早さで権力を失った。

一蓮托生(いちれんたくしょう)の関係にあると思っていた彼が外され、私はO氏のもとで今までの遅れを短期間で取り戻す任務を与えられた。

彼のおかげで余分な事情が蓄積していたのに加えて課題のハードルが上がって私が厳しい状況に置かれる一方、任を解かれた彼は恨み言を述べ、自分を正当化する発言を繰り返す日々を送ることになった。

問題の原因を他人に求める習慣や考え方を変えられない彼はO氏をけなし、「Aさんを雇ったのは失敗だった」と重々しく語り、そして今までと同様に大企業体質の問題や創造性を軽視する教育の問題について熱く語っていた。

世の知識人が口にするのと同じ論調と伝聞に基づいて問題を語る彼は、自身が数々の問題を引き起こしてX社を不利にした事実からは最後まで逃げ続けていた。

 

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