相手が成熟した女でないので、情け容赦なく切って捨てることができないのかもしれない。鈍感な少女が気づくまで、だからああして希望を持たせるような、終わったことをわからせるような、どっちつかずの態度を取り続けているのだ。

そう思っていたら、急に越前が例会に来なくなった。そのまま彼の欠席は一ヶ月以上も続いた。

〈ああ、そういうこと。面倒になるとそういう手を使うわけね〉

越前を蔑(さげす)むこの分析にあさみは満足し、よくよく自分が巻き込まれなくてよかったと思うのだった。

以前とは比べものにならないほど悩みが深刻になってしまった少女から、再び相談された。あさみはのちのち自己嫌悪に陥ることも覚悟して、少女のために自分が真実感じていることを忠言した。

「越前さんていう人はね、美代子(みよこ)ちゃん、あなたの手に負える人じゃないと思うの。正直なことを言うと、もう彼とはやめたほうがいいと思うの。あなたのためを思って言ってるんだけど」

だが、初めての恋にのめり込んでしまった少女の心は、先日までの無垢な外見からは想像できないほど〝女〟へと急速に変貌してしまったようだ。キッ、と眉を逆ハの字にしてあさみを睨みつけた。

「そう言うだろうと思った! 彼のことが好きなもんだから、あたしに手を引かせたいんでしょ! そしたら、自分にチャンスが回ってくるから」

次回更新は8月9日(土)、22時の予定です。

 

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