第一章 辛い結婚生活
杉山香子(こうこ)、四十二歳。
あてもなく、見知らぬ町を歩いている。
「はぁ~、歩き疲れちゃった。足が痛いなぁ~」
素敵なカフェを見つけて入って休む事にした。歩いている人は、年配の女性が多い。静かな住宅地だ。
「う~ん。ホットティーが美味しい」
私は、自分の生きたい道を進む為にこの町へ来た。でもどうしていいか分からないので、あてもなく歩き回り、とりあえずカフェで休んでいる。靴擦れが痛い。
今更、両親に心配をかけたくないし、実家にも帰りたくないしなぁ~。ふぅ~。
結婚ってあんなに辛いものなのかな。行員の友人達は楽しそうに話していたのに、私だけかな。好きでもないのに結婚を決めた理由が、好きな家事が出来ると思った、だけではいけなかったのだろうか。
久(ひさし)さんに未練なんか全然ない。本当は離婚したかったのかもしれない。振り返っても、楽しかった記憶はない。辛い結婚生活だった。
ホッとしている自分がいる。でも、これからどうすればいいのか分からない。半年はどうにか、生活出来るのだけど……仕事を探さなくては。はぁ~。
二杯目を注ぎ、ミルクティーで飲もう。お砂糖も二個。甘くて美味しい~。ふぅ~。
ふっと窓を見ていると大きな屋敷がある。凄いお屋敷だなぁ~、右側に勝手口があり、何か募集?みたいな張り紙がある。
「えっ!」
急ぎ張り紙を見に行った。住み込みに限りお手伝い求むと……これだ! 急ぎ、インターホンを押した。
「はい。どなたですか」と低い男性の声。少し怖そうな声。
「……すみません。張り紙を見て、来ました。でも急だったので履歴書を持っていません。ダメでしょうか? 家事全般、得意です。天職です」
「…………」
返事がない。どうしよう。
「私を断ったら、後悔しますよ! 是非、面接だけでもお願いいたします!」