燕の空
燕たちが電線に止まっている。
巣立ったばかりの若鳥は、見たところ身体の大きさは親鳥と大差ないが、尾が短い。親たちのりゅうとした尾羽は、まさに燕尾服のテイルそのもの。
燕はなぜか人の出入りのある軒ばかりをねらって、巣造りをする。
天敵のカラスから身を守るためらしい。
東南アジアから日本列島にやってきた燕らは、どう考えても昨年飛来した燕に違いない。古巣にちょっと手を加えて、今年も二度卵を産んで、それぞれ五羽巣立っていった。小さな島国とはいえ、北から南まで千数百キロはある本州の中で、古巣の場所を確実に見つけ出すのだから、頭の中にすばらしいナビゲーション・システムが搭載されているのだろう。
今年は強風にあおられて、ブルーベリー畑の防鳥ネットが破れて飛ばされた。仕方なく青い空を見上げながら摘み取りをしている。ムクドリや雀は実を食べるだけでなく、小枝に止まって実をつつき、蹴散らしていく。何か策はないものかと、鳥よけ効果があるという磁石を吊り下げた。猫の形をした黒い板に、磁石と光る目までついている。
鳥は体内に生物磁石を備えていて、それで方向がわかるのだという。強い磁力で、鳥の気分を悪くさせる、と説明書には書いてあるのだが、いっこうに効果は上がらず、偽物の黒猫はむなしく宙を見上げるばかり。
強い日差しを背に受けて飛翔する鳥たちが、空から笑っている。
(二〇一二・七)