【前回の記事を読む】「すぐズル休みする人」の正体――? 抑うつ症状、めまい、睡眠障害、集中力低下…など、頭痛だけではない片頭痛もちの苦しみ

第2章 片頭痛の謎を解く ~最適な治療法とは

5 片頭痛の謎を解く ~最適な治療法とは

服用するタイミングが大切な薬で、早めに飲むのがコツ。飲み遅れるとあまり効果がありません。

効果がないので後から消炎鎮痛薬を飲んで、「やっぱり鎮痛薬の方が効くから」と先に消炎鎮痛薬を飲んで、どうしても効かないときだけトリプタンを飲む、あるいはトリプタンは高いし無駄だから、と病院に来なくなってしまう方もいます。でもこれは間違いです。

よく患者さんに例えて言うのですが、片頭痛のときに血管の周りに痛み物質が溢れてきます。痛み物質=水と思ってください(図4)。

 

 

トリプタンは水道の蛇口の栓をひねって水を止める働きをします。しかし、タイミングが遅れると血管の周りが水浸し。勢いが強いと栓を閉めきれないので水浸しになります。消炎鎮痛薬はモップで水を拭き取るような作用だと思ってください。

元栓を閉めておかなければいくらモップ(消炎鎮痛薬)で拭き取っても後から後から水が溢れます。

ですが、先にトリプタンで元栓を閉めておいてから、残った水をモップで拭き取るとスッキリするのです。そういうわけで、消炎鎮痛薬を先に飲むのではなく、先にトリプタンを飲んで、その後、効果が不十分であれば消炎鎮痛薬を追加する、というのが理にかなった方法です。

急性期治療薬(消炎鎮痛薬)を毎日のように飲むと、かえって痛みが強くなる、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)というのがあります(詳細は後述)。

薬剤の使用数を減らすためにも、先にトリプタンを服用するのがお勧めです。トリプタンは血管収縮作用があるので、副作用で締め付け感や動悸がして飲めない方もいました。また、血管障害の持病がある方(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、もやもや病など)や特殊な片頭痛(片麻痺性片頭痛)はトリプタンを飲んではいけません。