【前回の記事を読む】片頭痛の由来はポルトガル語?徳川家康もフェンヅツウと言っていた可能性がある?

第1章 片頭痛の脅威~その正体とは

3 片頭痛もちは、頭痛がないときも悩まされている

片頭痛の人は、頭痛があるときはもちろんですが、頭痛がないときもさまざまな困りごとがあることがわかってきました。

次に発作が起こることへの不安はもちろんですが、集中力が低下する、抑うつ症状、におい過敏、乗り物酔いしやすい、平衡感覚障害、めまい、睡眠障害などです。頭痛を恐れて出かける約束ができなかったり、家族や同僚に迷惑をかけてしまうため、家族との関係が悪くなったり、会社で「あの人はすぐズル休みする」と偏見をもたれてしまうこともあります。

これらの症状が片頭痛に関係していることは今まで気づかれてきませんでした。頭痛もち本人も、片頭痛のせいとは思っていないので、睡眠外来に行ったり、耳鼻科に相談したり、産業医からメンタルクリニックを受診するよう勧められることもありました。

頭痛があるときだけでなく、頭痛のないときも実はとても困っていて、この部分を改善していく必要があるのです。

コラム3 片頭痛もちは「遠慮がちな人」が多い?

片頭痛の方はあまり自分の苦痛を周囲に吹聴しません。この傾向は昔から知られていました。日本頭痛学会の理事長を歴任し、慢性頭痛医療に尽力してきた坂井文彦先生らの有名な統計によると、日本の成人は少なくとも8.4%の片頭痛もちがいます。

昔、坂井先生に「私の病院には片頭痛もちがほとんどいないんですよ」とお話ししましたら「そんなことはありませんよ、必ずおられますから」と指摘され赤面しました。ちなみに私の同僚の2人の女医さんが退職後に初めて片頭痛もちと知りました。本人は勤務中、そのことをおくびにも出しませんでした。

なぜ片頭痛の苦痛を表出しないのでしょうか?

これは石器時代の生きざまを引き継いでいるからでしょう。サボりに取られかねない片頭痛の苦しみをできるだけ隠蔽する自衛本能が身についているからだと推定しています。