【前回の記事を読む】妻の命を奪った賊を拷問し、殺した。大義であったのか...醜い私怨だったのか... 追い込まれた男に声をかけたのは―。

紅の脈絡

また、あるとき、フローレンスとエリスが早朝の散歩に出て、はしゃいだエリスが石につまずき、膝をすりむいてしまったことがあった。

フローレンスは自分の水筒の水を、エリスのかすり傷にかけて、丁寧に洗った。そして、かわいらしい模様のついた絆創膏を貼ってくれた。

「歩けますか? それとも、わたくしが背負ってさし上げましょうか?」

フローレンスの言葉に、エリスはうっとりとした心持ちで、背負ってほしいと答えた。

「あ、あの、おかしいでしょう? お義姉さま」

「え? 何がです?」

「だって、もう七つなのに、まだおんぶしてほしいなんて、赤ちゃんみたいで……」

「そのようなことはありませんわ、エリスさま。わたくしはエリスさまが素直に甘えてくださるのが、うれしいのです」

「まあ。ほんとうに?」

「ええ。ほんとうです」

エリスは、うれしくて、うれしくて、思わずフローレンスの背に頬を押しつけた。

フローレンスの背中は暖かかった。

このぬくもりを自分は生涯忘れないだろうと、エリスは感じていた。