「こんな田舎で見るお月さまもきれい。ううん、田舎だからきれいなのかしら」竜興と夜歩きを楽しみながら千鶴が言った。

「そうだね。この景色とももうすぐお別れだ。文平さんたちが、僕らの宇宙船のエンジニア五人に命をつなげてくれたおかげだ」

僕は、いつからか自分のことばかり考えるようになってしまったのではないか。竜興は折に触れてそう思う。

文平さんたちだって、あとしばらく辛い作業に耐えれば、刑期も終わり、穏やかな暮らしが待っていたかもしれないのだ。その機会を僕は奪ってしまった――

あの日、僕の心の奥に眠る本当の自分が目を覚まし、鬼神様を召喚して、そのお力をお借りして、憎しみをそのままあの城に侵入した男に投げつけてしまったのだ。

何とおぞましいことか。こんな僕が、やがてレイギッガアの王となる……。

その資格が、こんな僕にあるのか?

「あっ、竜興さまと千鶴さま!」

不意に聞き覚えのある声がした。虎太郎とゆきだった。

「お互い、月に誘われて出てきたわけか」竜興が微笑んだ。

「へ、へい」

虎太郎は、照れたような、困ったような顔をした。

「竜興さまが上の人たちにかけあってくださったおかげで、家族との面会時間も少し延びましたし、こんな夜でも、ちょっとなら。へへっ、監視つきではありますがね」

なるほど、虎太郎たちの五、六メートル後ろから、カンテラを持った巡査が一定の距離を保ちながらついてくる。

「ねえ、ゆきさん」

千鶴が大人びた声を出した。