そして運んだ松明を聖母像の前に灯し、暮れゆく湖を背景にして厳かなミサを執り行う。その後に船に乗せた聖母像を先頭に、ボランティアの船頭の操る幾艘もの船が湖面を進む。

巡行には村人も同乗し、村の女たちが聖母をたたえる祈りを唱える。まさに湖ならではの厳かな中にも美しい光景だった。

またドン・シルビーは教会で結婚式を上げるカップルをインターネットで募集したところ、毎夏イタリアのみならずイギリスなど外国からも数組のカップルの申し込みがあった。

教会は湖を見下ろす絶好のロケーションにあり、しかも彼らは地元のホテルで披露宴を開いたのでホテルに取ってもありがたいイベントだった。本当に司祭が若返りしてから村の教会はすっかり生き返った。

ところが、好事魔多し――。

ある朝アンナ先生が起きてきて朝の朝食の準備をしながらラジオを聞いているといきなりニュースが飛び込んできた。――昨夜ミラノ郊外の家でマリファナ・パーティーをしていたグループが逮捕された。

主宰していたのはカルチアーノの司祭・ドン・シルベストロだった。グループの中には未成年者が数名含まれていた。

アンナ先生は驚愕して丁度出勤してきたグラツィエ―ラにニュースは本当かと尋ねた。すると彼女は腰に手を当てて言った。

「ご存知なかったんですか? 夕べテレビの全国ニュースで流れて、今朝は町はその話で持ちきりですよ」

彼女は首を振って〝世も末だ〟と言いたげなジェスチュアをした。