【前回の記事を読む】「魚がさばけへんでも経営くらいできる、魚は生臭いから嫌」…店主の一人息子は、嫌々仕事をしとる。俺に物言われるのが嫌そうや。
磯吉商店
3年前に高校を卒業して鮮魚店で働き始めたヒロシ君は、土地持ちのお金持ちの父母と優秀な大学を出た兄姉を持つお坊ちゃまで、でっぷり太ってとにかくのんびりしている。
チカラは誰にも負けないので会議の大量の弁当を配達する時には大活躍してくれるが、普段は鮮魚店で魚のウロコ取り専門である。身体は大きいのに気が弱くてお店の近所の小学生に足を蹴られただけで泣いている始末だ。
ある日、給料をもらうとそのまま着の身着のまま家に戻らず1週間ほど姿をくらました。それで朝からヒロシ君のお母さんが白衣を着て「ヒロシの代わりで参りました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」とやってきた。
それでもハルは
「お母さん気にせんでもいいよ。ヒロシ君どこへ行ったのか心配やなぁ」とおおらかに笑っている。だから給料日にはヒロシ君のお父さんが車で迎えにやってくるようになった。
料理店ができて仕出し弁当を始めたので、鮮魚店だけだった頃に比べて一気に従業員が増えて賑やかで明るく楽しい職場になった。
学校が休みの日には、私たち子どもも従業員の人たちと一緒に厨房でお昼ご飯を食べた。大勢で賑やかに食べるご飯はこの上なく美味しかった。一年に一度は町内のお年寄りや子どもの友達も連れてバスで社員旅行に行き、年末には料理店の2階宴会場で忘年会もした。働くだけでなく楽しい思い出もたくさん作った。