私の小学校が休みの日は嬉しい朝ご飯が待っている。私は料理店の厨房の隅っこで好きな具材をお皿にもらって食べるのだ。出来立ての芋や人参、筍コンニャク、野菜の煮物が色とりどりに並んでいる。大鍋に入った熱々の肉シグレの横には一口サイズに切った鰹(かつお)が大きなお鍋に生姜と砂糖醤油で味付けされグツグツ煮立っている。

どれも美味しそうで目移りしてつい食べ過ぎてしまうのだ。そして食べ終わると母トモと祖母キヨのお手伝いをする。キヨは弁当にご飯を入れながらおかずの入れ忘れがないか最終チェックをする。そして私がご飯の上にゴマをふり梅干しを入れ蓋をして完成させる。母や祖母と一緒なら手伝いも楽しい。

キヨは若い頃から立ち仕事が多くて脚の膝が変形している。トモが一人頑張っているのが可哀そうだと言って、61歳のキヨは膝の痛みをこらえて自分ができることを頑張っているのだ。頑張った分キヨの身体はガッチガチに固まって、姉サエや私に肩もみを頼む。キヨの肩の凝りがあまりにひどいので小学生の私たちの手は痛くてすぐ疲れてしまうのだ。

私の父母も祖母もいつも朝から晩まで働いていた。従業員の人たちを大事にしていたし、経営者だからって偉そうにすることもなく驕りのない人たちだった。

いろんな人が磯吉商店に働きにやってきて留まり、また幾人かの人は辞めていった。学校では引っ込み思案で大人しかった私は、お店でお手伝いしている時の方がうんと楽しかった。活気に満ち溢れて大人のみんなが楽しそうだった。だから私は大人になることに憧れていたし、一緒に働くことが大好きだった。そして生きることは楽しいことだと自然に信じられた。

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