土井利位はやはり武辺の者だった。堀がいなくなると足を崩し、先程から廊下に控えやり取りを聞いていた男をちらと見る。

「絃之助。お主、確か大塩平八郎とは同僚であったな」

男の名は坂本絃之助俊貞。腕の立つ砲術家である。大坂に赴任してすぐ手駒になりそうな人材を物色したが、中下級の身分ながらこの男は有事に使える、と判断し以降身近に置いている。

「は。同じ与力格で大塩は町奉行、それがしは玉造口の管轄でした」

現代であれば平八郎が刑事部長、坂本は機動隊長、という関係か。

「どんな男だ?」

「確かに武術では切磋琢磨しましたな。ただそれがしが鉄砲のことしかわかってへんのに対し、大塩は頭も切れ仕事のできる硬骨漢ですわ」

「どこまでやる気だと思う?」

「そうでんな。あやつなら、徹底的に行き着くとこまで」

「それが奈落の底でもか?」

「笑って落ちていきますやろな」

ほう。ならば乗らぬ手はないな。土井は顔も知らぬその元与力に賭けてみることにした。だが本心を見透かされぬよう、坂本にはこれ見よがしに大あくびをして見せた。

次回更新は4月12日(土)、11時の予定です。

 

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