【前回の記事を読む】少女が書いた手紙を破り捨て、代わりに私が書き直した手紙を投函した。彼を踏みにじる言葉を消して…

2章 一本道と信じた誤算

このころの苦しみを、理緒子に幾度となく聞いてもらった。理緒子は同情などしなかっ
た。

「書き直すなんて、大まぬけの大偽善者よ」

しかし、救いがあった。少女は18にもなるというのに、常識はずれに子供っぽく、喜んだり怖がったりして悩みながら、なかなか越前の手に乗らないことだった。

成熟した女に対してなら十分に通じるものも、子供相手では独り芝居をしているようなものだったのかもしれない。捕まえたかと思えば、変なところからスルリと逃げてしまう。

効くものも効かない。次第に越前も疲れて、あきらめの色が濃くなってきたように見えた。サークル一の伊達男が、たかが18の娘にこんなにてこずるとは。

あさみはフッと笑いが込み上げてきて、少しだけ心が舞い上がるのを感じた。

だからというわけではないが、少女と横浜で待ち合わせて、或る日お茶をごちそうした。理緒子に言わせると、〝あんたが要らないならこっちがもらうわ〟談判ね。やめて、違うわよ、とあさみはそのとき怒って否定した。

「その後、気持ちはどお? 越前さんを少しはいいと思い始めた?」

コーヒーを飲みながらあさみが尋ねた。

「いや、こわい。嫌い。ずうずうしい」

三つ並べられた形容詞は、あさみの耳に快く響いた。意味を補うなら、あたしはまだ子供なので男性の魅力がわかりません、というわけだ。

「あ、そう……」