馬を知らない人間は、初めて大きな馬を目の前にして、すぐにまたがったりするだろうか。その大きさに恐れおののいて後ずさりするだろう。
だが、そこへ別の人間が来て、どうどうどう、と慣れた手で馬の首をたたき、愛情を示したらどうだろう。「なーんだ」と安心して馬に近寄っていくに違いない。
あさみがその後の少女に見たものは、少なくともそんなふうに解釈しなければ、説明がつかないものだった。
「ついでにもう一つ白状しなければならないんだけど、怒らないでくれる? あたし達が一緒に仕上げたあのお返事ね、あたし、うちへ持って帰って書き直しちゃったの。
激しい所を穏やかな言葉に変えて『もう少し待ってください。自分でもまだわからないの』というふうにしてしまったの。
気に入らないかもしれないけど、あなたはまだまだ人生の初心者だから」
少女は事態が呑み込めず、あさみの言葉が頭の中をから回りしているようだった。あさみはしばらくそっとしておいた。
納得がいくまで考えさせよう。こちらを責めるなら責めてもいい。何事も自分で考え、自分で答えを出さなくちゃいけない――。
見ると、少女の口元がいつしか微妙に緩んでいた。
次回更新は8月7日(木)、22時の予定です。