格之助がカイに言う。
「一揆の元締めの息子か。なるほどお主の肚の座り具合は血筋やな。けど、よう今まで生き長らえたもんやな。一揆は連座制で一族郎党処罰されるはずやが」
「家族も五人組の隣近所もみんな打ち首さ。おふくろが捕まる前にオイラを肥溜めの中に隠してくれて、夜中に村を抜け出した。オイラを送り出す時、おふくろが言ったんだ。あんたは父親みたいになるな。何が起きても貝みたいに口を閉ざして生きろ、って」
だから、カイなのか。だが、おまえは貝にはなり切れない。なる気もないというのだな? 意義は少年の反逆心の根の深さを知った気がした。
「カイ。侍は憎いか?」
そう聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「憎いのは侍じゃねえよ。どっちかっつうと、百姓の方だ。なんの抵抗もせずに、お上お上って言いなりになる奴らが、オイラは大っ嫌いだ」
宇津木は自分の事を言われたように黙り込んだ。
「義を見てせざるは何とやら、か。まあ、わしは『義』いうもんを信じとらんがな。確かに、武士やろうが百姓やろうが傍観者気取りの奴らの罪は重いやろな」
先生に賛同されてカイは少し照れ臭くなった。
「だからよ、侍とか百姓とか関係ねえ世の中にするんだろ。なんだっけ……カクメイ。な。やろうぜ、カクメイ!」
平八郎は年端もいかない少年に背中を押された気がした。そうだ。侍だけの決起では、ただの権力争いと変わらない。やはり町人も農民も引き込んでいかねば、大義は付いて来んやろな。ふっと肩の力も抜けた。
「ほな、やってみよか。カクメイ」