「われらは、不埒者を懲らしめようとしているわけですね?」
「そうだ。大義はわれらの方にこそあるのだ」
ふたりは町奉行の門前で門番に取次ぎを願い出、奉行部屋に通された。跡部が提出された檄文を読み終えて、内通者に問い質す。
「これを実行に移す、というのか?」
「は。明後日の夕刻、堀様のご着任挨拶の折、浅岡様のお屋敷を数十名で襲撃し、焙烙にておふたりを……」
「暗殺すると申すか」
計画を知った跡部の顔はみるみる蒼褪めていった。河合が聞く。
「跡部様。我々は今後どのように?」
それには答えず、跡部は控えている同心に焦燥感をあらわに命じた。
「予定は全て取り止めよ。そ、それと堀を明日ここに呼べ。なにか対策を立てねば」
自分たちの存在を忘れられている、と感じた吉見がしびれを切らす。
「あのう、お奉行。跡部様」
「何だ。まだ何かあるのか?」
「……いえその、昇進のお約束ですが……」
跡部は鴻池屋から「大塩侮るべからず」と聞いて以来この吉見に洗心洞の内偵をさせ、もうひとりの河合の父・郷左衛門には田沼意義の尾行をさせていた。結局郷左衛門は行方不明のままだが、その報酬がそれぞれの家格を上げての昇進だったのだ。
「追って沙汰する!」
次回更新は3月29日(土)、11時の予定です。
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